四十歳で結婚も良し

いろいろあって39歳で結婚しました。
諦めたことも多いけど、面白い人生です。

つらい一夜

先生は「頭の中で何かが起きています。脳腫瘍か、脳炎か、脳梗塞などの可能性があります。」とおっしゃった。


私は、血液検査で炎症の値は上がっていなかったのと、
脳梗塞ならもっと手足が動かなくなるはずだ、という思いから、その中では脳腫瘍の可能性が高いと感じた。しかし私は人間の医療について多少の知識はあっても、犬に関しては全くわからない。先生は経験値からすべての可能性があるとご判断されたんだと思う。


「今晩一晩は入院させたほうがいいと思います・・・。原因を確定するためには来週、大学病院でMRIをなさってもいいと思います」
「でも犬のMRIは全身麻酔(気管挿管)の必要があるのでそのリスクは前提として置いてください」
その日は金曜日の夕方だった。土日は(その動物病院での対症療法以外)何もできない・・。


私は「無理に延命ということは考えていませんが、原因がわからければ、苦痛を取る努力も出来ないので、全身麻酔に耐えられる状態になったらMRIは受けさせたいと思っています」と話した。


先生が丁寧に説明をしてくださっている中、仕事を終えた主人が診察室に入ってきた。


先生は主人にもほぼ同じ説明をしてくださった。今晩は入院させたほうがいいということも含め。
話が終わったところで主人は先生に感謝の気持ちを伝え、「今日は連れて帰ります」と言った。
主人は昔から「一人ぼっちにされるのは、娘にとって一番の苦痛」という考えだ。
多分それはそうなのだと思う。しかしそこにある命の危うさを考えると判断は本当に難しい。
先生は少し驚いていらっしゃったが、快く認めてくださり、
念のためということでもう一本発作止めの薬を注射してくださった。


娘は、発作に加えて様々な投薬もあり、脳内が混乱していたようで、この時点ではガーガーと機嫌悪く唸っていたが、すごく苦しそう、というような状態ではなかった。


家に戻った娘は、イライラと徘徊を続けた。発作後から目が全く見えなくなっているのと足元がおぼつかないので、常に私たちが後ろをついて歩かなければならない。時々座り込んで、ガアーガアーと不安そうな鳴き声を上げた。とてもかわいそうだった。


今夜飲ませてください、と言われたフェノバールを飲ませたところ、とたんに腰が立たなくなった。関連性はわからない。脳へのダメージがたまたまこの時点で強まったのかもしれないし、薬で抑制が強く効きすぎたのかもしれない。


(ほぼ)歩けなくなった娘は、プリン、ゼリー、柔らかいドッグフードなどを口元にもっていくとまあまあ食べた。水分もいろいろ工夫させて飲ませようとしたが、あまり摂ってくれなかった。
その夜は、リビングルームに私が布団を敷き、フェンスや障害物で回りを囲って、その中で娘と一緒に寝た。娘は不自由な脚でズルズルと徘徊したり、不安そうに鳴いたり失禁したりした。
この先どうなるんだろうと思うと可哀想でつらくて、私も一晩中、身体中がこわばる感じだった。