ケリーバッグ
社会人になって、最初に「これは絶対買う」と思っていたのはケリーバッグだった。
小学校低学年のときに、街中でふと目に留まった女性がいた。
紺色の素敵なワンピースを着ていた。そして手に、恐ろしく美しい革のバッグを持っていた。
私は母に「あのバッグはなあに?とっても素敵」と聞いた。
母は「きっとあれはケリーバッグっていうバッグよ。素敵ね」と答えた。
その日から、私はケリーバッグを忘れられなくなった。
形も素敵だが、その革質だ。ツヤツヤしているのにやわらかそうで、奥行きがある。あんな革が、この世の中にあるんだ・・・。
結果として、初めてケリーバッグを持ったのは、自分が31歳のときだった。
私が探していたのは往年のボックスカーフ。ボックスカーフ以外はケリーである意味がないとすら思っていた。
実際、購入する数年前から店頭でいくつものケリーバッグを手に取ったが、驚いたのは革のクオリティの低下だった。
私が鮮烈に記憶している革質と、目の前のケリーバッグの革質は、明らかに違う。
いろいろな人に話を聞くと、革質は残念ながら落ちているとのこと。
どうしよう・・・あこがれたものと違う・・・
そんなとき出会ったのが、1985年製の黒のボックスカーフ、28サイズだった。明らかに、今のケリーバッグとは品質が違う。革が内側から輝くようなオーラがあった。
ショップの方が、パリのアンティークショップで見つけたものと言う。当時は2002年ころだったので、すでに17年の型落ちだったし、黒は候補に入れていなかったのだが、すぐに購入を決めた。
その後、ほかにもエルメスのボックスカーフを持っているが、これ以上の革に巡り合えていない。
素晴らしい革は、メゾンのスーツはもちろん、普通のTシャツ&ジーンズにも合う。
四隅がどうしても白く剥げてくるのだが、それすらも美しく見えた。
数年前のある日、帰宅すると主人が「白くなってたところ、黒いマジックを塗って直しておいたよ」と、指をさした。
恐る恐る指をさした方向を見ると、、、、、、
主人に向き直り、「ありがとう!」と言った自分を褒めてあげたい。
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